もう二度と会えない友を思う。彼女がなぜ死んでしまったのか、リヴァルには分からない。もちろん彼女の死が自殺によるものだったなんて信じられるわけもない。でも、もしかしたら真実を知っているかもしれない彼らはもう いない
彼女が埋まっていくその姿を見ながら苦しそうな顔で手を握り締め、後悔に震えた
彼
そのすぐ、次の日ぐらいに、1年という月日を経てみんなを照らし明るい笑みからどこか悲しみや寂しさを含む顔をするようになった彼が怖い顔をしてここに来た。自らの親友に会いに来たには随分と厳しい表情、
もしかしたらあの時にはすでに何かが始まっていたのかもしれない…
その間リヴァルは何も知らず、何も知らされず、ただブラウン管越しにニュースを見ていることしかできなかった。
最後のモラトリアム
そう言ったのは確か、会長だ。
あの時は行かないでほしいと願ったが、自分の立場になるとまた変わるもんだなぁと思う。何もできなかった自分がいやだった。全てを後で聞くことしかできない、後悔しかできない自分がいやだった。
今もそうだ。全てが終わった今でも俺は何もできない。
世界は日常を取り戻そうとしている。昨日のことなど省みず明日へ向かって歩いている。欠けてしまったカケラを省みることなくもとの姿を取り戻している。
彼が望んだのは“明日”だったという。ならばこれが彼の望んだ世界なのかもしれない。
ただ、
それでも省みられることのないカケラ達は、リヴァルにとってかけがえのないものだった。
死因は自殺だと、ただそれだけを突きつけられてあまりにも唐突に帰らぬ人となった少女
友の弟だと自らも弟のように思い、接し、しかし本当は実の弟ではなかった少年は、全てが終わった後に、偽りの兄を守りきってなくなったのだと告げられた。
悪逆皇帝と呼ばれ、世界中から憎まれて、その死を喜ばれてさえいても、民に悟られることもさせず、憎しみと、世界に巣くった闇を共にこの世を去った彼、誰よりも大切にしていた妹と、親友を残し黄泉の旅路に出た。
誰もが、もう二度と戻らぬカケラたち
たとえ、世界にとってそのカケラがあまりにも小さく、永遠の時の流れの前にはちっぽけな存在であっても、リヴァルにとっては己を己たらしめる、リヴァル・カルデモンドを構成する世界にとってはあまりにも大切で、大きなカケラ達だ。
と、ふと聞こえてきた足音に沈みかけていた思考の渦から引き戻された。
全てが終わった後、ただ一人ここに戻ってきてくれた彼女
そのあまりの豹変振りに驚き叫んだことはまだ記憶にも新しい…
「ごっめん! リヴァル、待った!?」
そう言いながら生徒会室に駆け込んできた彼女 紅月カレンは、足音のスピードの割りにまったく息を乱した様子もなく入ってきた。
これでよく病弱なんていったなぁとすでに驚きを通り越して感心している。
まぁさすがは黒の騎士団のエース様。俺絶対50メートル走したら負けるだろうなぁ…
「ごめん!クラスの子につかまっちゃってさぁ〜」
そういう彼女は復学してからは俺の後輩だ。さすがに出席日数が足りるわけもなく、なんと1年生からやり直を条件に復学してきた。
本人曰く、時間はまだたっぷりとあるから…それにお母さんも学校には行きなさいって…との事だ。
「おふくろさん、元気か?」
彼女が母親と一緒に住むようになってからというものこれを聞くのがなんだか恒例行事のようになってしまっていた。
「うん!」
そう返事をしながら笑ったカレンの顔は本当に晴れやかで…
その顔に3カ月前までのかげりはない。
カレンはクリスマス休暇の終わった学園に泣きそうな笑顔でただいまといって戻ってきた。