「総督府へはすんなり入れた。ホントはね少しは覚悟してた。俺は枢木全首相の息子だから…たとえ戦争が終わったとしても逮捕されたりするのかなって…
でも、すんなり入れて中に通された。びっくりしたよ、こんな簡単でいいのかな?って…
中に入ったらそこには父さんを殺したあの男が待ってた。あの時は分からなかったけど今なら分かる。ナイトオブラウンズ ナイトオブワン ヴァルトシュタイン卿
そして上座に座って俺を見ていた、あれは…」
「ブリタニア皇帝 シャルル・ジ・ブリタニア」
ずっと黙って俺の話を聞いていたルルーシュがはじめて口を開いた。
「そう。その後、俺はヴァルトシュタイン卿に押さえ込まれ、陛下は俺にギアスをかけた。そして生まれたのが 僕だよ ルルーシュ
父を殺したという罪の意識に苛まれ、死を切望する売国奴。人が人を殺すところなんて見たくないと叫びながら命令ひとつで人を殺す、ブリタニアの白き死神 君の敵だ。
君なら想像できるだろう? だってこれは全て僕が君にしたことだ。僕は君を押さえつけて目を開かせた。ギアスをかけるために。そして地位と引き換えに君を売った。」
・・・
「ルルーシュ、ごめん、謝ってどうにかなることじゃないのは分かってる。だけど、ごめん。僕は君を傷つけた。傷つけて、裏切って、利用して…さいていだ、最低だ。でも、でも!そう思う一方でやっぱり君を憎む自分もいる。わからない、分からないんだ! この8年間の僕は偽者で嘘っぱちで、なのにユフィを殺した君が憎い。何が本当で何が嘘なんだ? 本当の俺は誰なんだ!?」
ルルーシュの顔が見れない…ルルーシュにとっての枢木スザクは憎むべき敵だ。僕と同じように君も今も僕を憎んでいる。どんなに言い訳して謝っても僕がした事実は消えない…もし、今君の顔が憎悪に染まっていたら? ぼくは、僕は…
スザクは今何を考えているんだ?
うつむいてしまっているためルルーシュからはスザクの表情を見ることができない。
あの時もそう思った。
8年前、あの夕焼けの中スザクはうつむいたまま黙って両手を握り締めていた。
どう声をかけていいかわからなかった。もう二度と会えなくなるかもしれないから何か言わなくてはと必死で言葉を探した。
その結果が「ブリタニアを……ぶっ壊す!」とは我ながらお粗末なことだが…
あのときのスザクがそんなものを抱えて、そんなことを考えていたなんて全く気づかなかった…
あの時はあの時、今は今だ。今俺はスザクになんと言えばいい?
ずっとスザクを憎んだ。あの男の前に引き出されたとき、記憶を取り戻してから、ずっと憎み続けてきた。
でも、それは間違っていたと知った。スザクの本来の意思ではないと思える。
じゃあ今、俺は何を思っている?考えている?
ルルーシュは胸の中を探るように瞳を閉じた。
今この胸の中にある思い
それはあの男への燃えるような憎しみ、スザクへの悲しみ、哀れみ、同情、まだくすぶっている憎しみ、そして
愛しさ
スザクを愛おしく思う 気持ち
ずっとふたをしてきた。神根島で向かい合ってから、違うもっと前、ユフィの騎士になった時から…
「スザク…」
思わず零れ落ちたようにつぶやいた名前にスザクの肩が震えた。