初めて感じる明確な殺意
スザクは金縛りにあったように動けなくなった。恐怖に声がのどに張り付いてうめき声すらも出せない。
「ほう、おもしろい…私に戦いを挑み、この殺気にも気を失わぬとは…たいしたものだ 小僧。」
男が近づいてきてもスザクは動くことができない。
「今見たことは他言するな。誰にもだ。特に皇子皇女らには言うな。」
そういって男は俺に剣を握らせた。
父さんを殺した
枢木家の宝刀
「もし他言すればお前もそのものも必ず殺す。必ずだ」
男は背を向けて去っていく。スザクは一歩も動けなかった。
敵だ。あの男はブリタニアの人間、でもルルーシュを簡単に殺すって…ルルーシュにとっても敵…
伝えなくちゃ。みんなに、ルルーシュに伝えなくちゃ…伝えなくちゃ! でも!!
「お前もそのものも 殺す」
殺される、殺されてしまう…ルルーシュがナナリーが、もし俺が話せば二人が殺される!あの男は絶対に殺しにくる
いえない、言えない 誰にも言えない!
スザクは何があった!? と周りから聞かれても分からないと答えることしかできなかった。
そしてあの日、
夕焼けがあたりを血色に染めあげた あの日
目の前には1台の車。中には先にナナリーが乗っている。アッシュフォード家とやらから来た二人の迎え
そして
ルルーシュ
話さなければならない。ルルーシュたちは自分たちを死んだことにするといっているが、あの男は、ブリタニアはおそらく、彼らが生きていることを知っている。
言わなくちゃ、言わなくちゃ いわなくちゃ…
「僕は……スザク、僕は……ブリタニアを……ぶっ壊す!」
言えなかった。ルルーシュに伝えられなかった。
もう…会えないかもしれないのに…
うつむいたままの瞳から零れ落ちた涙が地面に丸いしみを作る。
悲しかった ただ 悲しかった
父さんが死んだこと
一人きりになること
これから殺されるかもしれないこと
もう二度とルルーシュにもナナリーにも会えないこと
全てが ただ 悲しくて
涙が止まらなかった。
声もなく泣き続けた。あたりはすっかり夜の帳が落ち、空には星が瞬いている。
ルルーシュとナナリーと3人で見上げた日々と同じ空
泣きながら決めたことがある。もし俺が生きて大人になったら、必ずルルーシュとナナリーを探しに行こう。また3人で、ただ笑いあえた日々を取り戻すために。
これで泣くのはやめだ! 進まなければ、前へ進まなければ!
スザクは涙をぬぐい立ち上がった。とりあえずは六家の命に従い総督府へ向かうこと。
新たな決意を胸に秘め、スザクは総督府へ向かい歩き出した。
秘めたるは生き抜く決意、生き残る決意、再びまた会える日のために…
それが人生を狂わせることになるとも知らず、スザクは夜闇の中歩き続けた。