血に塗れた記憶の向こうで

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09




 初めて感じる明確な殺意

 スザクは金縛りにあったように動けなくなった。恐怖に声がのどに張り付いてうめき声すらも出せない。

「ほう、おもしろい…私に戦いを挑み、この殺気にも気を失わぬとは…たいしたものだ 小僧。」

 男が近づいてきてもスザクは動くことができない。

「今見たことは他言するな。誰にもだ。特に皇子皇女らには言うな。」

 そういって男は俺に剣を握らせた。
 父さんを殺した

 枢木家の宝刀

「もし他言すればお前もそのものも必ず殺す。必ずだ」

 男は背を向けて去っていく。スザクは一歩も動けなかった。

 敵だ。あの男はブリタニアの人間、でもルルーシュを簡単に殺すって…ルルーシュにとっても敵…

 伝えなくちゃ。みんなに、ルルーシュに伝えなくちゃ…伝えなくちゃ! でも!!

「お前もそのものも  殺す」

 殺される、殺されてしまう…ルルーシュがナナリーが、もし俺が話せば二人が殺される!あの男は絶対に殺しにくる
 いえない、言えない 誰にも言えない!

 スザクは何があった!? と周りから聞かれても分からないと答えることしかできなかった。

 そしてあの日、

 夕焼けがあたりを血色に染めあげた  あの日

 目の前には1台の車。中には先にナナリーが乗っている。アッシュフォード家とやらから来た二人の迎え

 そして

 ルルーシュ

 話さなければならない。ルルーシュたちは自分たちを死んだことにするといっているが、あの男は、ブリタニアはおそらく、彼らが生きていることを知っている。

 言わなくちゃ、言わなくちゃ  いわなくちゃ…

「僕は……スザク、僕は……ブリタニアを……ぶっ壊す!」

 言えなかった。ルルーシュに伝えられなかった。

 もう…会えないかもしれないのに…

 うつむいたままの瞳から零れ落ちた涙が地面に丸いしみを作る。

 悲しかった   ただ 悲しかった

 父さんが死んだこと
 一人きりになること
 これから殺されるかもしれないこと
 もう二度とルルーシュにもナナリーにも会えないこと

 全てが ただ 悲しくて
 涙が止まらなかった。

 声もなく泣き続けた。あたりはすっかり夜の帳が落ち、空には星が瞬いている。
 ルルーシュとナナリーと3人で見上げた日々と同じ空

 泣きながら決めたことがある。もし俺が生きて大人になったら、必ずルルーシュとナナリーを探しに行こう。また3人で、ただ笑いあえた日々を取り戻すために。

 これで泣くのはやめだ! 進まなければ、前へ進まなければ!

 スザクは涙をぬぐい立ち上がった。とりあえずは六家の命に従い総督府へ向かうこと。
 新たな決意を胸に秘め、スザクは総督府へ向かい歩き出した。
 
 秘めたるは生き抜く決意、生き残る決意、再びまた会える日のために…
 
 それが人生を狂わせることになるとも知らず、スザクは夜闇の中歩き続けた。

 


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