血に塗れた記憶の向こうで

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05




 うわぁぁああああ

 突然聞こえてきた悲鳴にルルーシュは意識を浮上させた。いつの間にか眠っていたらしい…
 そんなことを寝ぼけた頭で考えているとまた悲鳴が…
 今度ははっきり聞こえ、意識を覚醒させる。
 ぱっとベッドに目を向けるとスザクが悲鳴を上げていた。

「っスザク! スザクしっかりしろ! 俺を見ろ! スザク! 俺がわかるか? スザク!!」
「いっいやだぁああ!」

 パニックを起こし続けるスザクを抱きしめてルルーシュは根気強く声をかけた。

「スザク、大丈夫だから。大丈夫だから。」

 次第にスザクの呼吸が落ち着くのを待ってルルーシュはゆっくりとスザクから体を離し目を合わせた。

「スザク。俺だ。わかるか?」

 スザクの焦点が次第にルルーシュに合わさっていくのをじっと見つめた。

「ルルーシュ?」

「スザク…」
 
 ここにきて初めてルルーシュを認識できたことにどっと力が抜けた。

「スザク、よかった…俺がわかるな?」
「うん。俺はどうして?ここは?」

 スザクは戸惑った風に見慣れない室内を見回して拘束されている自分の体をみた。

 その質問は予想できていた。そしてそれに対する答えも4623通り用意している。

「スザク、何も覚えてないのか?」これでさらに絞れるはず…

「えっと…昨日僕は政庁にいて、ナナリーの所に行かなくちゃならなくてそれで…」
「それで?」
「えっと、それで声をかけられて後ろを向いたら…青い、光が、そしたら俺…俺は…」

 また震えだしたスザクをルルーシュはあわてて抱きしめて背中をなでる。

 ルルーシュのにおい、だ…

「ごめん、ありがとうルルーシュ。ねぇ聞いてもいい?」

 ルルーシュの存在を感じたらこんなにも心が休まる自分に苦笑する。
 あぁ、君はこんなにも…

 でも君は、君の…その服は…

「君がゼロ?」

 心が凪いでいた。
 スザクの瞳にはっきりと光が宿っていたからか?
 記憶を取り戻してからずっと考えていた。
 もし、今俺が再びゼロをしていると知られたらスザクはきっと俺を殺す。
 また、銃を向け合うことになると思った。
 1秒後にはそうなるのかもしれない、だけど…

「そうだ。俺が、ゼロだ。ブリタニア帝国に反逆するテロリストであり、お前の 敵だ。」


 ルルーシュが―――ゼロ
 わかっていたことだ。どんなに機情が無実を証明してきてもなぜかふに落ちなかった。いつでも俺の直感は彼がルルーシュであると感じていた。

 思ったよりショックを受けない自分が不思議だった。
 もし再び現れたゼロがやっぱりルルーシュだったらきっと溢れ出した憎しみで彼を殺すんだろうと思っていた。
 それに今でも心の中でもう一人の僕が彼を殺せって叫んでる。
 胸が苦しい

 もう一人の…僕

 それを認識してしまった。心の中にもう一人の僕がいる。8年前に生み出されたもう一人の僕

 つまり、あれは夢じゃない…

 そう思った瞬間涙があふれた。それは俺の、俺と僕の根幹を揺らがすことだ。

 瞳が揺らいだ。そう感じた瞬間、またスザクが泣き出してしまった。
声を必死で押さえつけてしゃくりあげている。

「ルルーシュ…どうしよう、ぼく、僕、どうしようっどうしよう、僕はなんてことっ! どうすればいい? どうしたら…」
「おい? スザク!?」
「そうだ、死ななくちゃ。僕は罪びとだから、僕は死ななくちゃ人を殺したたくさんたくさんたくさん殺した、殺した! 殺した!! 殺したんだ!!! どうして!? なんで!? ただ! 俺は、ただ! 人が人を殺す姿見たをくないだけだったのに!!!!! っあぁぁぁぁああああああ!!」
 パニックを起こしだしたスザクにどうしたらいいかわからず、ルルーシュはただひたすらスザクを抱きしめ続けるしかできなかった。
 


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