血に塗れた記憶の向こうで

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03




斑鳩のある一室に黒の騎士団の幹部全員がそろっていた。その中央には拘束され床に転がされている枢木スザクの姿がある。スザクの瞳は焦点を結んでおらず、思ったよりもひどいその状況にルルーシュは言葉を失った。

室内に足を踏み出したゼロに気づき皆はスザクから視線をあげゼロを見た。

「ゼロ…スザクが…」

そういいながら不安そうな瞳をしたカレンがこちらに近づいてきた。
その不安はそのままスザクの異常事態を示しているようでルルーシュの心がざわめいた。

とにかくもしものことを考えてゼロの正体をしっているカレン以外屋を出るように言おうとしたときゼロに焦点をあわせたスザクと仮面越しに目が合った。

「ゼロ」

小さくこぼされた言葉に気づいたのは唇の動きを読んでいた俺だけだった。

「ぜろ、ゼロ、ゼロ! ゼロ!! ゼロ!!! 君はだれ? 君はだれ!?まさか、まさかまさかまさか! いや違う、違う、違う、違う、違う!! そうじゃないんだ! ぼくは、僕は、僕は、僕は、僕は!! いやだ!! 違う!! そんなこと!! そんな! いやだ! 違う! 僕は、俺は自分の意思で、俺の意思で! 俺が決めたんだ! 俺が! 自分で! 守りたかったから! だから! だから! ………誰を? おれはだれをまもりたかった? おれはなにをした? ここはどこ? だれ? ぜろ? おれはだれ? あっ…ぁぁぁああああああああああああ````````!!!!!」

 ゼロを視界に入れた瞬間先ほどまで何も反応しなかったはずなのにパニックを起こしだしたスザクに誰も反応できなかった。
 そのあまりの異常さに全員が言葉をなくしていた。これは普通じゃない。誰もが思ったが意味がわからなかった。

 ルルーシュにもわけがわからなかった。

 その横を緑の髪が横切りC.C.はスザクの首筋に手刀をいれた。

 静かになったこの場で話せるものはいなかった。誰もが言葉を失っていた。

「カレン、こいつを運ぶ。手伝え。」
 誰も動くことのできなかった中たんたんとC.C.が指示した。
 
 指名されたカレンはふらりと動き出しスザクに近づく。それを見てルルーシュははっと気がついたかのようにC.C.を見て叫んだ。

「どこに連れて行くきだ!」

 必死さを感じられるその声にC.C.はふっと笑った。

「安心しろ。放り出しはしないさ。お前の部屋に連れて行く。ここにおいておいたらいつか八つ裂きにされるぞ?」

「くっ枢木スザクをゼロの部屋に!? 冗談ではありません!! そんな危険なこと認めるわけには参りません!!」
 
 C.C.の言葉に反応してディートハルトが叫んだ。それを聞いて他の騎士団のメンバーもうなずく。

「ディートハルトの言うとおりだ。C.C.枢木スザクはブリタニアの人間だ。それをゼロの私室に連れて行くというのはあまりにも危険すぎる。」
「扇さん…
私も危険だと思うわ、C.C.こいつは信用できない。」
 
 あなたも知っているでしょう? とカレンはC.C.に問いかける。
 
 黒の騎士団が口々に反対意見を口にする中C.C.はじっとゼロを見つめていた。

「扇、カレン、枢木スザクは私の部屋に連れて行く。扇の言ったとおり彼は敵だ。絶対に危険はないとは言い切れない。しかし、ここにおいておくこともできない。彼に恨みを持つ人物は騎士団内にも少なくない。彼はナイトオブラウンズだ。内部情報もよく知っているだろうし、生かすことでの利用価値もある。」
「だからってなぜゼロの私室に連れて行く必要があるの!どこか空き部屋でもっ!」

 それでも納得できないとカレンは思った。スザクとゼロが同じ部屋にいることでもしゼロの正体がばれてしまったとしたら!!

「カレン。言っただろう? 彼に恨みを持つものが騎士団内にいると、事情はわからんが今の彼には抵抗ができない。殺されたら厄介なんだ。ならば私の部屋が一番安全だろう? 異論は許さない。それとも私はここまで拘束された枢木スザクに負けるとでも?」

 カレンは目を伏せた。ゼロが並べた理屈にみんなまだ不満そうだがこれ以上ゼロの決定に逆らうことはなさそうだった。今の説得でみんな納得したのかはわからない。特にディートハルトは納得していなさそうだったが私は知っている。本当の理由、ゼロが、ルルーシュが、ただスザクを殺したくないだけなのだと…でも

「わかったわ。C.C.頭のほうを持って、」

 私は知っている。誰よりも仲のよい友達同士だった彼らを知っている。だから…

 そうしてスザクに手を伸ばしたとき横から腕が伸びてきた。

「私が運ぼう。」

 そういったときには藤堂さんがスザクを抱えあげていた。

「私が運んだほうが早い。ゼロ、スザク君を連れて行くときだけ君の部屋に入ってもいいだろうか?」

「あぁ。すまない。頼む」
 ゼロの声がとてもか細く聞こえる。こんなこと初めてだとその場にいた面々は思った。

 


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