そして、終わりを告げる鐘が鳴る。
教会、西塔の温室。
「へぇー。教会にもこんなことがあるんだ。」
オレとフランシスは今日も二人で教会を散歩していた。
「この花食えるんだぜ!」
そう得意げに言ってやると、フランシスはふっと苦笑する。
「お前もすっかり教会の人間だな。元気そうでよかった…」
その笑顔がなんだかはかなくて…
「なぁなんでお前オレの居場所が分かったんだ?」
「バカ。あんなに派手に教会区で墜落したんだ。まず最初に教会を探すのは普通でしょうが。」
「あ…そ、そんなこと知ってたんだからな!って、オレばっかり話してごめん。」
「ん?そのためにこんな教会の端まで来たんだろう?俺に話したいことがあるなら遠慮せずに言えよ。」
あ、いつもの笑顔。その笑顔に安心してオレは話始めた。
オレの記憶。オレが本当は隣国の王子だったこと。父親を軍に、ひいてはイヴァンに殺されたこと。
フランシスが黙って聞いてくれるからすごく嬉しくて…
「って、オレ奴隷だったのに、いきなりこんな話、信じられねぇよな…」
「オレは信じるぜ?」
「だってお前お高くとまってるもんな?王子様、納得だぜ。」
「な!おいてめぇ!!」
「お前の国を滅ぼした国に生まれた俺が言うのもなんだけど、
お前の心にもちゃんと親の愛情が残っていて良かった。」
そう言って頭をくしゃっとなでられた。
「アーサー・カークランドは生まれたときから一人ぼっちじゃなかったよ。」
その言葉が嬉しくて、その手の温度が、冷たくて…
つめたい?
「お前はどうする?」
「ごめん。お前迎えに来てくれたんだよな?でも、オレはもう軍には戻れない。」
不安が加速する。
「わかった。命がけなんだろう?だったら貫いて見せろ。」
「でも、フランシスは大丈夫なのか?」
オレを連れて帰らずに手ぶらで帰ったりしたら…
「アーサー。俺の声が届くうちに良く聞け。1つ、軍を敵に回すな。復讐は何も生み出さない。たとえ誰かを憎んで殺してもお前は救われない。必ず前を向け。光のある道を進め!
2つ、お前は人の優しさを受けるのも、人に心を開くのも苦手だが、オレの最高の友達だ。お前の幸運をいつでも祈っている。俺は必ずそばにいる。それを忘れんな。」
「な、何言って…」
「はは、俺も軍にはかえれねーや…」
「!じゃぁ…」
あぁこの時もしかしたら俺と一緒に居てくれるのかもしれない。俺はフランシスの言葉をきいてそう思った。
そしてそう思った俺を俺は殺してやりたくて仕方がない。
「最後に頼みがある。
オレを殺せ、アーサー。」
神様、なぜオレはフランシスが無事だなんて楽観できたんだろう。オレを逃がして無事で居られるはずがなかった。そんな当たり前のことがどうして頭に浮かばなかったんだろう。