君に出会えた奇跡

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その晩。
「今日受かったのは俺たち含めて19人だってさ。」

俺は試験で怪我をしたフランシスの手当てをしていた。

「情けねぇ…オレなんかまだ震えてる…」
そういうフランシスの腕は確かにかすかに震えていて、
「でも、試験じゃ何度もお前に命を救われてるけど今回はオレだって良いとこ見せたもんね!」
そう言って笑うフランシスがまぶしかった。
そんなことない。俺はいつでもお前のその笑顔に救われてきたんだ。
なんて、素直に言えたら苦労しない。オレはイテテ!と叫ぶフランシスを無視し包帯を巻く。
「でも、お前があいつを助けるなんて思わなかったぜ。さすがのあいつも形無しだな。」
そうしみじみとつぶやかれる。オレだってあんなことするとは思わなかった。ずっとオレをいじめてきた奴。でも体が勝手に動いて…
「ち、ちがう!あ、アレは体が勝手に動いただけであって…」
なんだか恥ずかしくて慌ててそう言い訳すると、ぽんと肩を叩かれた。
「なんだよ大親友!お前のこと誇りに思ってるぜ!」
うつむいていた顔を上げると笑顔でそう言われて、それがとてもまぶしくて…愛おしくて、

「…なぁフランシス、オレが奴隷だったのは知ってるよな?奴隷って言っても戦闘用の奴隷で、…物心ついたころには軍に買われてて…オレは、親の愛情なんて知らない…。
でも、お前を親友だと思えることって、なんだかそういうのに似てるのかな?」
心があったかくなるような、そんな気持ち…

そんなことを言ってしまった自分が照れくさくてうつむいていると目の前のシーツがぱたっと落ちてきたものでまるく染みた。
驚いて顔を上げると、
「バカっ泣かすんじゃねぇよ!」
「いや、なんでお前泣いてるんだよ!!」
フランシスがその青の瞳から涙を零していてぎょっとした。
「急にそんなこと言われたリアクションに困るでしょ!!」
そう言ってフランシスは目元をこする。

オレのために泣いてくれる友達がいる。それってすごいことではないだろうか?
「でも、お前からそんなこと話してくれたの初めてだから嬉しい」
そう言ってお前は笑うけど、オレのために涙を零してくれた。そのことの方がよっぽど嬉しかったんだ。

「よし!親友の誓いを立てよう!もし戦場でピンチになってもオレはお前を見捨てたりしない!!」
急に突き出された拳を見つめ俺はびっくりした。
「お、おう」
親友の誓い
その拳に己の拳を当てて俺は誓った。
「神に誓って死ぬときは一緒だ!!」

フランシスが誓うなら、神様、オレもてめぇに誓う
この時はこの後すぐ起こる未来のことなんて何も知らなかった。

そしてオレはこの時誓いを立てたことを呪うことになる。

神様、この誓いさえなければ、あいつは今もオレのそばに居てくれましたか?


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