血に塗れた記憶の向こうで

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01




「久しぶりだね、枢木スザク。いや今は枢木卿、かな?」

突然後ろから声をかけられスザクは驚いて振り返った。

気配なんて感じなかったのに!

「誰だ!? ってV.V.…?」

その瞬間

何が起きたのかわからなかった。
青い光、
突然あふれ出した思考の渦、
蘇る記憶、

過去の過ち、

そして、今…

ぼく は、おれは!?

「あっ、ぅぁあ、ぁあああああああああああああ``!!!!!!」

その日 政庁の廊下に悲痛な叫び声が響き渡った。



朝から降り始めた雨は時計の針が頂点を指すころになっても太陽の光を隠し暗い雲が立ち込めていた。雨は次第に強さをまし、視界を奪うほどになっている。時々雷鳴がとどろいてあたりを明るく照らしていた。

「雨やまないね、兄さん」
「そうだな。でもそんなことよりほら、この問題解けたのか?」

ルルーシュはロロの髪をくしゃりとなでながら言った。

学校が終わり帰宅した彼らは特にすることもなく、雨の日にわざわざ外に出ることも面倒くさいのでクラブハウスでロロの勉強を見ている。

「もう! 兄さんの意地悪! だってこの問題よくわからなくて…」
「どれだ? 教えてやるよ」

そういってルルーシュはロロの背後からノートを覗き込んだ。

「えっとね、ここまではわかるんだけど…」

そういってロロは問題集の解答ページと自分のノートをつき合わせる。
そんな風に眉をしかめながら問題と向き合っているロロを見てルルーシュは自然と湧き上がる思いを必死で抑えた。

…1年前にはここにはスザクがいた、だなんて
今、自分のそばに彼はいない。最愛の妹の場所だった席にはいつの間にか存在しないはずの弟が座っている。

ルルーシュはそこまで考えてしまったことを追い払うかのように頭を振った。

“会いたい”だなんて思うはずがない。俺はあいつを憎んでいる。あいつは俺を売り払ったんだ! 地位と引き換えに! そんな奴にあいたいと思うはずがない!

「兄さん?」

急に黙り込んだルルーシュにロロが不思議そうに顔を上げる。

「なんでもないよ。ここはだな…」

そういって何事もなく説明を始めたルルーシュにロロは不思議に思いながらも意識を宿題に集中させた。

その時

ぷるる ぷるる ぷるる

「兄さん、電話…」
「あぁ、扇? 何かあったのかな?」

突然かかってきた電話にロロは眉をひそめた。

せっかくの僕と兄さんの二人っきりの時間に!!

そうつぶやきながら電話に出ながら背を向けたルルーシュの背中を見つめた。

「私だ。どうした?」

電話の向こうはなんだか騒がしい。いやな予感がした。

「なにっ!? それはどういうことだ!!」

扇と電話している兄さんの声が突然鋭くなった。その声を聴いた瞬間ロロの背も自然と引き締まる。

「すぐにそちらに行く! それまでにおとなしくさせろ! 普通の拘束なんて無意味だ! 徹底的に動けなくさせろ・・・殺すなよ?」

そういって兄さんは電話を切った。その表情の険しさにロロは自分のいやな予感が当たったことを知った。

それはあまりにも予想にしなかった事態だった。たぶん自分だけではなく兄さんにも…

「黒の騎士団にスザクがきた。俺を呼んでいるらしい。」
 


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