君に贈る唄

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誰かが泣いてる。誰か…だれ?
遠くから聞こえてくる泣き声に耳を済ませる。
『ふぇぇ、っひ、っく、ひ、うぇええ』
この泣き声は、誰?
わからない。
思い出せない。
思い出したい。
そう思った瞬間突然フランスの視界が開けた。目に入る景色にすぐにわかる。
『これは夢だ』
フランスにとってここは見慣れた、けれどもうない場所だったからだ。
フランスは勝手知った道を聞こえてくる泣き声を頼りに進んでいった。 鬱蒼と茂る木の枝を避け、湿気にぬかるむ足元に気をつけながらたどり着いたのは小さな花園。鬱蒼と茂る木が奇跡的に作り出した日のあたる場所、自然の花園は小さい頃のあいつのお気に入りに場所で…
泣き声が近くなるにつれその思いは確信へと変わる。
『…イギリス。』
急に開けた視界にフランスは目的地にたどり着いたことがわかった。その証にイギリス、いやあの姿ならイギリスではなくイングランドと呼ぶべきだろうか?が、花園の真ん中で小さくなって座り込んでいた。
ぐずぐずとまぶたを手で覆いなき続けるイングランドにはこちらの姿は見えていないらしい。フランスは苦笑してわざと足音を殺して背後から近づいた。イギリスが泣くのは苦手だ。
そーっと、そーっと。
途中気づいた妖精さんたちにはシーっとウインクとともにお願いをして。そして、
『なぁに泣いてるの?』
背後からイングランドを腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。イングランドはびっくりして振り返ると俺の姿を見て真っ赤に頬をそめた。
『泣いてないっ泣いてないからな!ってかなんでお前がいるんだよ。さっき帰ったばっかりだろう!?だから、俺…』
イギリスの瞳に映る自分を見て自分の姿がカッコいいお兄さんじゃなくてまだ幼かったときの姿と同じであることに気がついた。
『ふぅん。イングランドは俺が帰っちゃったから悲しくて泣いてたんだ?』
『ち、ちが!』
『違わないでしょう?』
『違うんだからな!ふらんすのばかぁ!』
図星を指されて照れたのか真っ赤な顔でイングランドが抗議する。
可愛いな…こんな時代もあったよな、とフランスはなんだか切なくなってイングランドの頬に手をそえお互いの額をこつんと合わせた。ぎゅっと抱きしめた体は驚いているのか、はたまた緊張しているのかじっとして動かない。それはそうだ。実際のこの時代の俺はイングランドのこと好きだったけどそれはどっちかというと手に入れたおもちゃに対する好きでこんな風に抱きしめたり、愛してあげたりしてやれなかった。俺も子供だったなと今なら思えるが当時はそれでも大好きなイングランドをそばに置いておきたくて必死だったのだ。そう、もうすぐ俺はこの幼いイングランドを徹底的に傷つける。完膚なきまでに。絶対の信頼を裏切るのだ。武器を携え島を占領しこのお気に入りの少年を自分のものにした。きっとその時からずっと間違えたまま、掛け違えたボタンを直すように、そして別れの時が来る。
『フランス?』
いつもと様子が違う俺を心配したのかイングランドが覗き込むように顔を見てくるのでイギリスは精一杯の笑顔で返した。そして、
『なぁイギリス、覚えとけよ。今はまだ、わかんねぇかもしれないけど、俺はいつでもお前の隣にいるから。絶対いるから。そばにいるからな。』
これは夢だ。俺が生み出した、作り出した願望。だから今こんなこと言ったって本当のイングランドに伝わるわけがない。それでも寂しそうに翳る緑に俺はそう言わずにはいられなかった。そして、夢が覚める。

ドンドン!ドンドン!
激しく鳴らされるノックにフランスは目を覚ました。閉ざされたカーテンの隙間から外を伺えば、どんよりとした星を隠し、昼から振り続ける雨が世界を包んでいる。時計を見ると午前2時。訪ねてくるにはあまりにも非常識な時間帯だ。

ドンドン!ドンドン!
それでもノックの音は止むことはない。どう考えても近所迷惑だ。フランスは眉をしかめた。できるならこのままもう一度眠りに尽きたい。ただでさえ会議のごたごたで最近は睡眠時間が削られているのだ。しかし、ノックの音は止むどころか激しさを増す一方で、もしかしたら緊急事態かもしれないし、とフランスは叩き起こされた苛立ちをなんとか静めて体温でぬくぬくと暖かいベッドからするりと抜け出した。

ドンドン!ドンドン!
「はぁい。すぐに空けるから、ったくどこのどいつだよ。ったく、誰、だ…」
フランスはドアについてい鍵をはずしていく。オートロックなのでこちらから空けてやらないと扉は開かない。フランスはチェーンも鍵も開け扉を開くとそこで見えた光景に天を仰いだ。

「あ、フランスさん!」
扉の前ではべろべろに酔って今にも崩れ落ちそうなイギリスをカナダが必死で抱えていた。
カナダはフランスをまるで救世主かのように見ており、分かりたくもなかった状況が分かってしまった。
「とりあえず中入って?」


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