フランスが全てを拒絶するようなイギリスの悲しい背中にすがる。するとむくりとイギリスが起き上がってフランスを叩いた。一度出た手は何度も何度も繰り返し叩きつける。
「ばかばかばかばかばかばかばかばかばか!ふらんすのばかぁ!」
真っ赤に腫れた目でぽかぽかとフランスを殴りながら泣き続けるイギリスを見るとフランスの胸はきゅーっと縮こまってしまったように熱くなっていく。
「ごめん。ごめんね。」
「ずっと連絡まってたんだからなぁ!」
「うん。」
「何度も電話もしたのに!」
「うん。」
「お前一度も出ないし!」
「うん。」
「今日の昼だって、ずっといつものところで待ってたのに!」
「っ!うん…ごめんトラブルがあって。」
逃げてしまったと思ったイギリスはどうやら一足先にいつも二人でランチを食べる中庭のベンチに向かっただけだったらしい。たった一人、ベンチでいつまで経ってもこない俺を待ってイギリスはどんな風に思ったのだろう。一人待ち続けるイギリスを思うとなんで行ってあげられなかったんだ!と自分をたこ殴りにしてやりたくなる。
「ご飯、食べ損なった!」
「うん。ごめん!」
ぎゅっとイギリスを殴り続ける腕ごと強く抱きしめる。
「今日だって、ずっと楽しみにしてたのにっ、おれ、お前に嫌われたんだって。もう、俺のこと好きじゃなくなったんだって。おれ、おれっ!っ」
イギリスはそういうとぎゅっと自分の方からフランスにしがみついた。
「しんじゃう。」
「え?」
「おれ、お、おおまえにきらわれたら、くるしくて、かなしくて、つらくて、しんじゃうんだからなぁ!」
そう言ってふえぇと本格的に泣き始めてしまったイギリスが愛しくて、愛おしくて、愛おしくて、切なくて。フランスは自分も泣きたいような気持ちになって涙を零す代わりに腕に力をこめた。ぎゅーっとイギリスを抱きしめる。二人の間に隙間を全部無くすようにイギリスのことを抱きしめる。
「今日が何の日か覚えていてくれたんだ。」
こくり。首が肯定を示す。
「だから今日、楽しみにしてくれてたんだ。」
こくり。
「俺もずっと楽しみにしてた。」
ぎゅっとしがみつく力が強くなった。
「連絡できなくてごめんね。寂しい思いをさせてごめん。不安な気持ちにさせてごめん。」
ふるふる。涙に濡れた顔を隠すように顔を振る。イギリスの涙が染みこんで冷たかった。そんなことも愛おしかった。
「俺がお前のこと嫌いになったと思ったの?」
…
「イギリスは暴力的で、」
イギリスの肩が何かを恐れるかのように震える。突然始めた話に戸惑ってもいるのだろう。当惑と怯えが混じった目でイギリスはフランスを見上げた。そんなイギリスを安心させるようにフランスはリズム良くイギリスの背をぽんぽんと叩く。
「女王様で、甘えたいのに意地っ張りで、本当は誰よりも泣き虫で、素直じゃなくて、ツンデレで、元ヤンで、殺してやりたいと思ったのは星の数、殴り合いしたことも星の数、外交だとやることなすことえげつないし、最低最悪の隣国。」
「っ!なんだと!?」
「あ、調子戻ってきた。誰かにイギリスのどこがいいの?って聞かれたらさぁ?って思うしかないけど、」
「さ、さっきから、何が言いたいんだよばかぁ!!」
どんどん続くイギリスの短所という言葉の羅列にイギリスが我慢できなくなって叫んだ。そんなイギリスをひときわ強く抱きしめて。フランスは満面の笑みでイギリスに伝えた。
「つまり、嫌いじゃないんだよね。」
フランスがそう言うとイギリスは涙も止まったのかぽかんとフランスを見上げていた。その顔がなんだか間抜けでかわいくて思わず鼻の頭にキスをするとイギリスはみるみるうちに真っ赤になって、
「こんな時ぐらい好きって言え、ばかぁ!!!!!!!!!!」
「Je t’aimerai toute ma vie.」
『あなたを一生愛してます。』
フランスはイギリスの顎を救い上げイギリスの耳元で囁き、そのまま言葉も吐息も熱も。全てを奪うように深く口付けた。
ちらっと視界に入った時計は午前0時をさしている。106回目の二人の愛の記念日はまだ始まったばかりだ。
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とにかく甘くしたくて、甘くしたくてしたかったのに…
そもそもこれ協商の当日じゃなくて前日話のくせにこんなギリギリに書いてるとか本当にすみません!
ご迷惑をおかけいたしました。
それでは、少しでも喜んでいただけたら幸いです。二人の甘い夜に。
2010,04,08
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