「はぁ。」イギリスは下腹部に手のひらを当てうずくまる。
「おなかいたい。」
今日は今朝から体調が悪くイギリスは何度もトイレとリビングを行ったりきたりしていた。
「うぅ…おなかこわした。」
季節の変わり目。イギリスはよくおなかを壊す。もとより繊細にできているとは思いがたいが破壊力のアル料理を食べてもなんともない腹は気温にはめっぽう弱い。
イギリスは何度目かわからない往復をしリビングのソファでクッションを抱えてうずくまる。
そのとき、ベルの音と共に扉の開かれる音が聞こえた。
「ぼんそわー!坊ちゃん」
「てめぇ、勝手に人の家に入ってきてんじゃねぇよ!」
イギリスは侵入者をキっとにらんだ。
フランスはニヨニヨとほほを緩ませる。
「なぁに言ってんの?今更じゃない!」そう言ってフランスはイギリスの横に腰掛け、そのままの流れで肩を抱いた。
「…」
「……」
「………」
「…どうしたの?イギリス。いつもならここでこぶしの一つや二つ、」
そういいながらもいつくるか分からないイギリスのこぶしにおびえて警戒したもののイギリスは一向に身じろぎもしない。
「ちょ、本気でどうしたの!?」
明らかにおかしいイギリスにフランスはあせったように立ち上がりイギリスの正面に回った。
正面からクッションに顔をうつぶせるイギリスの顔を覗くと額には脂汗が浮いており、眉間には痛みからかしわがよっている。
片手を見てみると、クッションをつかんでいるのと反対の手はイギリスの下腹部を抑えていた。
「イギリス、おなかいたいの?」
返事はない。だが長年の間でその沈黙が肯定をはらんだものであることを知っている。
「ったく、こんな薄着して、おなかの痛みが治まるわけないだろう?」
そこからは早かった。
かって知ったる家。フランスは薬と飲み物を用意した後2階へあがり一組の毛布を抱える。
1階に戻ればおとなしく薬を飲んだのか、からっぽのグラスと、それでも苦痛が治まらないのか微動だにしていないイギリスが居た。
その姿に苦笑がこぼれる。
昔からこの子供はそうだった。森の中で野宿してるくせに季節の移り変わりには必ず体調を崩す。
しかし、誰も看病してくれるような人間は居なかったから妖精や動物たちと、ただただじっとして苦しみが治まるのを待つのだ。
初めてフランスにつれてきて体調を崩したとき、しんどいとも言わず必死の形相で泣くのを我慢していてあきれたものだ。
今もこのこの周りには妖精たちが居てくれるのだろうか。
フランスはイギリスの後ろから近づき持ってきた毛布でくるんだ。そのまま引き寄せて背中から抱きかかえるようにソファの上でくるんでやる。
「つめた!」
イギリスの手足は冷え切っておりどうしてこんな状態でじっとしていたりしたんだ!と怒りたくなる。
フランスはそこをぐっと押さえて手に口付けた。
手のひらで包むように熱を分け与える。足も冷たい部分を己の肌で吸い取るように抱きしめる。
ほほに、まぶたに、こめかみにキスを落とす。
そのままじっとフランスはイギリスを暖め続けた。
「んっ。」
イギリスが身じろぐ。
「イギリス?ましになった?」
「ん。」
フランスが抱きしめながらきいてやるとイギリスはかすかにうなづいた。
その証拠に手足にも熱が戻ってきている。
フランスはそれをたしかめ、イギリスを抱きしめていた腕を解いた。
ーこういうときには消化にいいもの。ホットミルクかな?よく眠れるし。
ああなったらたぶん寝た方が早い気がする。ホットミルクだけじゃな…
あ、この前カナダが置いてったメイプルシロップ使うか。
そんなことを考えながらフランスが立ち上がるとイギリスがぎゅっとしがみついてきた。
「おわっ。どうしたの?まだ痛む?」
病人と女子供には優しくがモットーだ。フランスはイギリスを抱きとめてふわりと笑いながらきいた。
「 … ばか、」
「へ、?」
「置いてくな、ばかぁ!」
そう言ってフランスの腰にしがみつき顔を上げたイギリスの瞳に涙がたたえられていて、
ー…もう、何この子。可愛すぎる。しかも、なんだかこどものころの口調に良く似ていて…
これで置いてくとかお兄さん鬼じゃん。
「ホットミルク、作ろうと思ったんだけど、いらない?」
「いらない」
「あったまるよ。」
「お前が居るからいい。」
ぶは、俺は湯たんぽですか。
でもやっぱりイギリスは可愛くて、
ま、いっか。
「んじゃ、もう一回お兄さんとあったまろうか。」
フランスはしょうがないなぁと言いながらソファにねそべり手を差し伸べる。
イギリスは少し顔を赤らめながらもおとなしく手をとり腕に抱かれてくれる。
神様、この可愛い子を独り占めする時間を俺に下さい。
そして案の定10分後くらいにアメリカが突入してきます。
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