※R18
西仏的要素あり西加
西あんまりいい役じゃない。←作者は西好き。
「アーメーリカッ、隙有り!」
「ほわぁ!」
数日間続いた世界会議も終わった夕暮れ時。皆がそれぞれ友人達と食事や帰路に
ついた静かな廊下をカナダは一人で歩いていた。
「はぁ…置いてかれちゃった。ひどいよ、アメリカ…」
カナダとて別に一人残りたかったわけではない。会議終了後、皆がまだざわついて片付けをしていた。無論カナダも皆と同じく書類を纏めて鞄に仕舞おうとしていたのだ。そこに、
「カ〜ナダッ!」
「うわぁ!」
アメリカのタックルに両手で抱えていた書類が散らばる。
「もぅ何してるんだい?カナダは相変わらずドジだなぁ。」
「い、今のはどう見ても君のせいだろう!?」
アメリカのタックルが例え手加減しているとしてどれだけの威力を持つものなのか。きっと本人は考えもしないのだろう。カナダは明らかに不名誉なレッテルを貼るアメリカに対抗すべく反論するが、
「あ、日本〜」
「って、ちょっと!」
あっという間にアメリカは日本と共に会議室を出てしまった。
…あのメタボ、
カナダはため息と共に書類を集め始めた。何年一緒にいるのか。すでにカナダはアメリカの起こすことは災害として割りきっていた。やっと最後の書類を拾い、思ったより遠くまで散らばっていた、カナダが顔を上げた時には…
「誰もいない…」
会議室は空になっていたと言うわけだ。
そこで冒頭に戻る。カナダが肩を落として会議室を後にし、廊下を歩いていると明るい声が聞こえたと思ったらほわぁ!と膝がカクンと曲がりカナダは見事に転がった。
「い、痛た…」
「あかんなぁ、アメリカ。敵に後ろ姿見せたら。」
視線を上げるとそこにはニヤニヤとしてやったり!という顔で笑う本日のホスト国、スペインがいて…
そう言えばスペインさんの最近のマイブームはアメリカにひざかっくんをしかけることだったなぁ…
ならば彼はまたいつものように僕をアメリカと勘違いしているのだろう。
間違いは訂正しなければならない。
カナダはスペインが人違いをしていることを伝える。いや、伝えようとしたのだ。
「あれ?もしかして自分カナダとちゃう?」
スペインの方から言われた言葉にカナダは目を見開いた。
「あ、はい。カナダです。」
「悪いなぁ!後ろ姿やと分からんかったわ!」
自分が言う前に人違いに気づいてくれたスペインにカナダは純粋に驚いた。
「よく、わかりましたね?」
「なんでや?」
「正面から見ても僕をすぐにカナダと気づいてくれる人は多くないですから。ましてや後ろ姿なんて気づけるのはフランスさんとアメリカくらいのものです。」
事実その通りで親代わりでありかなり長い間共に過ごしたはずのイギリスでさえ未だに正面で向き合っていても間違われるのだ。正面を向いただけでカナダであると気づいてくれたスペインにカナダは賞賛を送りたい気分だった。
「そら分かるわ。だって自分ら似てないもん。せや、カナダは一人なん?」
軽く、ごく軽く言われた言葉にカナダは再度目を見開いた。
「え?あ、はい。」
「一緒にメシ行かへん?」
それは眩しいくらいの笑顔で、カナダは思わずこくりと頷いた。何よりアメリカと似てないなんて、そんな事を言われたのは初めてで、聞いてみたいと思ったのだ。その言葉の真意を。
ただ寂しかったのかもしれない。世界会議の輪の中にいてもいつも一人ぼっちになる自分。親代わりのイギリスにさえ覚えてもらえないほど希薄な印象。いつだって皆にとってカナダはアメリカの兄弟だった。だれもカナダをカナダとしてみてくれない。唯僕を一大切にしてくれるフランスさんだっていつも僕にかまっていられるほど暇じゃない。アメリカは言わずもがなだ。
さびしかったのだ。僕は。だからあんな、…
スペインにつれてこられたのは会議のあった首都マドリードから車で30分ほど走った郊外にある小さな店だった。一見普通の民家のように見えるそれはよく見れば小さく看板が立っている。
「どや?」
「おいしいです!」
さすがスペインオススメの店だけあってどの料理もとてもおいしかった。スペインが選んでくれたワインもとてもフルーティーで飲みやすく、料理に合い、どんどん杯が進む。あまり接点のない二人にとっての共通話題といえば自分の兄であり彼の悪友であるフランス関連が多く、二人はそれぞれの幼少の話を肴に盛り上がっていた。
ほとんどまともに話たことはないスペインとこんなに楽しいディナーが出来たことが嬉しくて、何より自分を、自分だけを見てくれていることが嬉しくてカナダも日頃に比べると嘘のように饒舌になった。それをスペインはうん、うんとうなずきながら話を聞いてくれている。
「それで、フランスさんが…」
カナダがアルコールの後押しもあって上機嫌に話を続けているとふと横から視線を感じた。カナダが視線を感じるままに横を見るとスペインが見たこともない優しい表情でこちらをじっと見ている。その優しい表情に自分の頬がカッと熱がのぼったのを感じた。
「あ、あの、スペインさん?」
カナダがなんだかおろおろと落ち着かない様子で声をかけるとスペインは「あーごめんごめん」と苦笑してそっと持ち上げた手をカナダの髪に差し入れた。そのまま頬を撫でるように髪をすく。その優しい手のひらにカナダはますます頬を赤くしてぴくんと震え、「あ、あの、」と口ごもる。
カナダが困っていることに気づいたのだろうスペインが「堪忍な〜」と苦笑し手を引いた。
「堪忍な。なんやほんまにようフランスと似てるなーって思ったらつい。」
その言葉にますますカナダの顔に血が上った。
カナダにとってそれは何よりも最上級のほめ言葉なのだ。幼いころたった一人で荒野をさまよっていた僕を見つけてくれた美しい人。太陽の光を背に手を差し伸べてくれたその姿は幼心に天使様のようだと思った。まぁ実際の天使様はもっとすごかったのだが…
だからカナダは嬉しくてなんだか舞い上がって照れくさくて、思わず手元にあったワインをくいっと飲み干した。
「ふわぁ、なんだか、ふわふわ、しま、す…」
「−ほんまによう似てる。」
混濁していく意識の中でこぼれたスペインの呟きはカナダに届くことはなかった。
ふと、目を覚ますと見知らぬ部屋だった。
カナダはずきずきと痛むこめかみを押さえる。
「えっと、確か世界会議の後スペインさんと食事してて、あれ?」
ここはどこなのか。自分は何をしていたのか。世界会議の後から順を追って考えていると丁度背を向けていたリビングのドアの開く音がしてカナダは振り返った。すると入ってきたのはスペインで、
「あ、起きたん?悪いなぁ、カナダがあんなにお酒弱いって知らんかったんや。覚えてる?自分ワインの飲みすぎで店で寝てもうたんや。」
言われてみれば自分は店でスペインとワインを飲んでいた気がする。普段フランス産ばっかりならここはスペイン産のワインも飲んでおくべきだと言われて、それが思わず飲みやすいものだから飲みすぎてしまって、
「す、すすす、すみません!僕、ご迷惑を!!」
カナダが我に返ってスペインに誤るとスペインは気にせんでええよ、「イギリスみたいに暴れられたら困るけど」と言ってくしゃくしゃと髪を撫でてくれた。
うわぁ、頭を撫でられるのってどれくらいぶりだろう…
思わずその感触が気持ちよくてカナダは猫のように目を細めてその手を享受しているとふわっと舞い降りたお日様の臭い、そして唇に暖かな感触が触れた。
「え?」
驚いて瞳を開くとすぐ間近にスペインの顔があった。
「え?えっと、え?あれ?いま、の…は?」
混乱する頭で必死に状況を整理しようとするが、頭が追いつかない。そうして固まっている間にもスペインはそっと髪に指をもぐらせて流れるようにカナダの眼鏡をはずしてしまった。急に広くなった視界に驚いてカナダは目を瞬かせる。スペインはその様子を至近距離で眺めながらふっと笑い、額に、髪に、目元に、頬に、鼻先に、唇に、キスの雨を降らせる。
「あ、あの、スペインさ、ひゃっ!」
するりと身体を撫でられてカナダは驚いて身体を竦めた。スペインの暖かな手はゆっくりと鎖骨から胸、脇のラインをなでおろし、腰を抱く。シャツ越しにスペインのぬくもりを感じてカナダは恥ずかしさにかぁっと頬を染めた。
「な、なにを?スペインさん?」
何がどうなっているのかわからない。
「可愛い、カナダ…」
耳元でささやかれる言葉。かすれたような腰に直接響くような甘い声。
「ん、ふっ、んやっ!ま、まってください!スペインさん、スペインさん!」
あとはなし崩しだった。
「ふっ、っは、ぁ、だめです!」
スペインの唇が首をなぞって少しずつ下に下がっていく。その唇が胸の頂を含んだ瞬間「ひやぁ」っと声をあげてカナダの身体が跳ねた。
くつろげられるスラックス、下着も何も剥ぎ取られ、ソファに押さえつけられる。
己のものを口に含まれた瞬間、カナダは声を上げて白濁を飛ばした。
抵抗できなかったわけではない。アルコールで身体に力が入らなかった。未だに己がどういう状況にいるのかも分かってなかった。それでも抵抗するすべがなかったわけではない。
それでも身体は言うことを聞かず、スペインのするがままに翻弄されていた。
触れ合う箇所すべてが熱かった。
「ン、だ、ひぁ!だ、ダメです、や、やぁ!」
己でもふれたことのない窄まりに触れられてカナダは悲鳴のような声を上げた。仮にもフランスとイギリスを兄に持つ身だ。未だ己にそういった経験はなくとも男同士の性交にどこを使うのかは理解している。だからスペインが己に何をしようとしているのかも理解できた。
「大丈夫。フランスほどやないけど俺もうまいから。」
「な、ダメです!や、放してください!」
もう一度言おう。抵抗できなかったわけではないのだ。男との性交の経験、ましてや受け入れる側なんてない。それでもカナダの身体は吐き出される言葉とは裏腹に抵抗することも、逃げることも出来なかった。
寂しかったのだ。いつでもひとりで皆をただ眺める日々、いつでもアメリカのその次の存在でしかない自分。
でもスペインは見つけてくれた。
一人ぽつんと残った広い会議場から僕を見つけ出してくれた。
僕を見てくれて一緒にご飯も食べて、優しくしてくれた。
寂しかったのだ。
だから、
これで埋められると思った。心の中にぽっかりと空いた大きな穴、寂しい穴を、今度こそ埋められるかもしれないと、思ったんだ。
「かわええな、ほんまにかわええ。」
「ひぁあああ!」
受け入れるべきでない部分に入り込んだ指がある1点にふれた瞬間カナダは殺しきれない悲鳴を上げた。湧き上がる快感。
充分にほぐされたのだろう後孔に熱の塊が触れる。
「もっと啼いてや」
そこからはもうどこまでもなし崩しだった。スペインに揺さぶられるままに身体が揺れる。始めは痛みを伴ったはずなのにいつの間にか身体はきちんと快楽を拾い集め気が付けば夢中でスペインにしがみついていた。生理的に零れ落ちた涙をスペインが舌で舐めとるように掬っていく。
「ふ、あぁ!ひぁあああああああ!」
「くっ、」
昇りつめたからだが熱を放つと同時に身体の中に熱いものが注がれたのを感じた。
「っは、はぁ、や、やぁ…も、やだぁ…」
もう何度目か分からない。行為自体が初めてだというのに回数を重ねるたびに己の身体は快楽を覚えていくのか敏感になっていく気がする。数えることも出来ぬほど吐き出したはずなのに己のそこは未だ透明の液体を撒き散らしスペインの愛撫に答えていた。後孔はスペインの吐き出したもので溢れている。スペインが身体を揺らすたびに繋がった箇所から中から溢れた白濁が音を立てて零れだした。カナダは自分の身体の浅ましさにめまいがしそうだった。
「ひゃ、ん!も、もう無理です、スペインさん、スペインさん!」
「ン、いく、で、」
何度目だろうか、スペインの合図にお互いの身体を高めあったその時、
「―――フラン」
拾ってしまった音に戦慄した。
胸が、痛い。
今、彼はなんて言った?聞き間違いじゃない。確かに、“フラン”と…
カナダにとってフランスにほめられることは最上級の喜びだった。光を背に微笑む人、大切な兄。大好きな人。その人に似ているといわれることが何よりの喜びだった。
何よりの…
心が痛かった。やっと見つけてくれたと思った。僕を、僕だけを見てくれる人。心に穿たれた穴を満たしてくれる人。
カナダのこめかみを一筋の涙が滑り落ちた。
そんなもの居なかったのだ。どこにも、どこにもいなかったのだ。スペインが求めたのは僕じゃない。ただの『身代わり』
朝目覚めたらソファではなくベッドに寝ていた。おそらく夜清めてくれたのだろう体はどこもべたつくことなく清潔だ。そっと視線をずらすとすぐ傍にスペインが寝ていた。カナダはスペインを起こさぬようそっとベッドを降り、すばやく衣服を身に付ける。時刻は朝の7時。もう飛行機も動いている。飛行場までの道のりもなんとかなるだろう。
寝室の扉を開ける。スペインは未だに眠りの中だ。カナダはぎゅっと手を握り締めスペインを見つめた。
そして、
「夢を見せてくれてありがとうございました。」
呟いた言葉は受け取るものもなくやがて消えた。
ぽつんと流れ落ちた涙がスペインの朝の風に乗って、消えた。
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